白衣に袖を通した日、名古屋の空がやけに広く見えた
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白衣に袖を通した日、名古屋の空がやけに広く見えた

看護師になろうと決めたのは、ごく個人的な理由からでした。二年前に父が入院したとき、担当の看護師さんの対応があまりにも丁寧で、弱っている父がみるみる表情を取り戻していくのを見て、この仕事ってすごいと思ったんです。当時は食品メーカーの営業職で、仕事に不満があったわけじゃない。ただ、あの病室での光景が頭から離れなかった。

退職を決めてから看護学校に入るまで、半年ほど準備期間がありました。三十歳を過ぎてからの受験勉強は、思っていた以上にきつかったです。学生時代に得意だったはずの科目が、まったく頭に入ってこない。覚えた端から抜けていく感覚は、年齢を実感する瞬間でもありました。

名古屋の学校を選んだのは、実家が愛知県内にあったからです。学費と生活費を抑えるために実家通いを選びました。三年間、同級生のほとんどが現役世代の中で、自分だけが少し浮いているような気恥ずかしさはありました。でも実習が始まると、そんなことを気にしている余裕はなくなりました。現場は想像よりずっと濃密で、毎日何かに圧倒されていた記憶があります。

転職先として選んだのは、名古屋市内の中規模病院です。内科病棟に配属されて、最初の三ヶ月は覚えることが多すぎて、帰宅してすぐ寝落ちする日が続きました。先輩たちは厳しいけれど、困ったときに声をかければちゃんと助けてもらえる。そういう職場だとわかってからは、少し肩の力が抜けました。

営業職と看護師、まったく違う仕事のようで、人と向き合うという意味では根っこが似ていると最近感じています。遠回りしたとは思っていません。

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